2014/06/02

中国の旅を終えて

 中国の旅を終えて

「大都市と地方(田舎)」をテーマにした2回目*の取材。
中国では、上海と紹興で撮影することに決めた。
取材都市をこの2都市に絞る前に、私は北京往復の航空券を取ってしまっていた。
そのため北京上海紹興の往復という長旅を経験することになる。
しかし、この一見無駄ともいえる上海―北京間往復の長旅が、気持ちの切り替えになり、中国を理解する上で多くの気付きを与えてくれたことは、後に感じたことだ。
上海と紹興だけにとどまらず、北京そして鉄道の中から見る様々な都市や田園の風景は、私の中国への想像力を大いに膨らませてくれた。
*1回目は2013年末、フランスのパリとヴィトレでの取材です。
[上海]
上海は中国最大の都市と言われる。
首都でこそないが、その歴史の類まれでドラマチックな変遷と、ダイナミックな都市の構造は、上海の最大の魅力といっても良いだろう。
上海は時代と空間が立体的に交錯した都市だと思う。
そこには多くの国の文化が入り込んでいた歴史と、垢抜けした部分、昔ながらの庶民の暮らしが、明るさ、にぎやかさを伴って共存していた。
 都市の良さとは、人間の様々な状況や状態に対応する器があることだと、私は思っている。そういった意味でも、上海にはそれがあった。
「都市の空気は人を自由にさせる・・・」というイーフートゥアン氏の著書『トポフィリア』の一節があるが、その表現がぴったりな都市といえるのではなかろうか。
そういえば、氏も中国系アメリカ人だった事を思い出す。

  
[紹興]
紹興は江南地方の小さな都市で、水路が市の縦横に走っているのが最大の特徴だ。
ここでは水路と共に生きている人々の昔ながらの暮らしを間近に見ることができた。
市街地では都市生活の部分ももちろんあるが、それは一部にすぎない。
紹興を舞台にした魯迅の短編小説『明日』にも描かれているように、隣近所や1つの集落が親せき同士の様に近い関係が、いまだに残っていると感じた。
どこの家の誰がどうしている、といったことが隣近所に把握されているというのは、個人主義の生活スタイルに慣れてしまった都市生活者からすると、驚くべきことだ。

紹興では水路のごとく、ゆったりとした時間が流れていた。